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[試練と絶景の縦走]後立山連峰を歩き倒す

白馬岳稜線

こんにちは 山絵いっとくです。

今回ご紹介するのは、白馬岳、五竜岳 鹿島槍ヶ岳 等を擁する後立山連峰です。

裾野には日本有数のウィンタースポーツのゲレンデが広がるこの山域は、登山のゲレンデとしてもとても優秀。

個性豊かな名峰と、それらを繋ぐスリルに満ちた稜線が広がっています。

目次

後立山連峰とは

後立山連峰は、北アルプスの北部、前回記事で紹介した立山からは黒部渓谷を挟んで反対側の位置にあります。

(内部リンク:【北アルプス入門】立山 定番コースと見どころ

名前の由来はそのまんま富山から見て立山の後ろにあるから。

このエリアはスキー場で有名な白馬岳、五竜岳、双耳峰が印象的な鹿島槍ヶ岳の日本百名山3座と、日本三大キレットの八峰キレット、不帰ノ嶮を擁します。

今回はそんなイベント盛りだくさんな後立山連峰を南から北へ縦走するコースを紹介します。

後立山連峰の百名山

後立山連峰には、深田久弥先生選出の日本百名山が3座あります。

鹿島槍ヶ岳

鹿島槍ヶ岳は南峰(標高2889 m)と北峰(2884 m)を持つ双耳峰です。

両山頂は緩やかな吊り尾根で結ばれていてその優美な山容は南側の種池山荘方面から見ても北側の五竜岳から見ても、登山者の目を楽しませてくれます。

日本屈指の豪雪地帯にある鹿島槍ヶ岳は、2023年現在、日本に7つある氷河の一つカクネ里氷河を持ちます。

鹿島槍ヶ岳
五竜岳方面から見た優雅な鹿島槍ヶ岳
カクネ里氷河
鹿島槍の稜線からカクネ里氷河を見下ろす

五竜岳

優雅な山容の鹿島槍ヶ岳とは対照的に、五竜岳(標高 2814m)は岩に鎧われた重量感のある漢らしい山です。

山頂からは360°の大展望で、特に黒部の谷を挟んだ立山・剱の山並みが見事です。

鹿島槍ヶ岳との間の稜線は日本三大キレットの1つ八峰キレットです。

五竜岳の山容
朝日を浴びる五竜岳
五竜岳から見た 立山・剱

白馬岳

ウィンタースポーツのゲレンデとしても有名な白馬岳 (標高2932 m)。

山名としては「はくば」ではなく「しろうま」と読みます。

名前の由来は春雪が解けると雪渓に黒い代掻き馬の岩模様が現れるので、「しろかきうま」から転じて「しろうま」と呼ばれるようになったらしいです。

もともとは黒い馬の山なんですね。

実際、白馬岳山頂部は堆積岩が主体の黒っぽい山。

日本を代表する花の名山でもあります。

実は山頂は黒い白馬岳
夏の白馬岳は高山植物の花畑が広がる 奥に見える台形の山は白馬三山の杓子岳

後立山連峰 縦走

後立山連峰の山々にはそれぞれ多方面から登山道がついています。

特に白馬岳や五竜岳は裾野が冬にスキー場になるため、夏でも山の中腹までゴンドラリフトなどを使ってアクセスすることができ、標高の割には登り易い山です。

その一方で、これらの山々を稜線伝いに歩こうとすると途端に難易度が跳ね上がります。

特に鹿島槍ヶ岳と五竜岳の間の「八峰キレット」、五竜岳と白馬岳の間(正確には唐松岳と白馬岳間)の「不帰ノ嶮」は日本三大キレットにも数えられる急峻な岩場で、スリル満点です。

キレットは漢字で書くと「切戸」左右が切れ落ちたやせ尾根を表します。

今回は、厳しい岩場を潜り抜け、後立山の個性豊かな山々を一気に堪能する、魅力満点の縦走コースを紹介します。

コースタイムは大体30時間弱、二泊三日で行けないこともないですが、ふつうは三泊四日か余裕をもって四泊五日で歩かれるロングコースです。

このコースは急斜面に着いた巻き道や急な岩場の登り降りが頻繁に出てきます。

事故の確率を少しでも下げるためヘルメットは必ず持って行ってください。

扇沢から鹿島槍ヶ岳

柏原新道(4時間)

鹿島槍ヶ岳への最もメジャーなルートは立山・剱岳の登山拠点である室堂にアクセスする立山黒部アルペンルートの長野県側の起点でもある扇沢から登る柏原新道です。

扇沢から森の中を1時間弱歩くとケルンがあります。目の前には針ノ木岳から爺ヶ岳に続く稜線が立ちはだかり、その上に種池山荘が小さく見えます。

種池山荘までは3時間半。
見た目通りの急登なので、適切に休憩を取りつつ無理のないペースで登ります。

途中の崩壊地では右斜面から落石の恐れがあります。
立ち止まらず短時間で通過するよう心がけましょう。

登山道わきにコバイケイソウの花畑が現れると、ほどなく種池山荘です。
到着時刻次第ではここで一泊することになります。

(外部リンク:種池山荘)

ケルン付近から目指す稜線を眺める
柏原新道上部はコバイケイソウとヤマハハコの花畑 奥の山が爺ヶ岳

種池山荘から鹿島槍ヶ岳(4時間)

種池山荘から爺ヶ岳まではチングルマの群落の中を緩やかに1時間ほど登ります。
山頂部からは鹿島槍ヶ岳への稜線がよく見えます。

爺ヶ岳から1時間ほど緩やかに下り少し登り返すと冷池山荘です。
可能であれば扇沢からここまで進んで宿泊すると余裕をもって鹿島槍ヶ岳登頂に望めます。

冷池山荘から約2時間、花を眺めながら歩けばあっという間に鹿島槍ヶ岳南峰に到着です。

南峰から北峰へは片道30分です。

チングルマの群落
爺ヶ岳稜線上のチングルマの群落
鹿島槍ヶ岳
早朝 爺ヶ岳山頂付近から鹿島槍ヶ岳を望む
南峰から見る吊り尾根と後立山の稜線

鹿島槍ヶ岳から五竜岳

鹿島槍ヶ岳~キレット小屋(1時間半)

鹿島槍ヶ岳から五竜岳へ続く深く切れ落ちた細い岩の稜線は八峰キレットと呼ばれ、国内の一般登山道では最難関の1つです。

鹿島槍ヶ岳の吊り尾根から、ザレた急坂を下ります。

道が岩にへばりつく様になると八峰キレットの核心部です。
鎖を補助として使い慎重に通過して下さい。

核心部を越えても崖伝いの細い道が続きます。
難所の後は気が緩み事故が起きやすくなります。
気を引き締めて歩いてください。

最低鞍部はキレット小屋が立っています。

やせ尾根にぴったりと嵌るように建てられたスゴイ小屋です。

ここからの登りにはかなり体力を消費するので、ここで一泊する計画にしておくと余裕を持って歩けます。

(外部リンク: キレット小屋

八峰キレットの核心部切れ立った岩の間を進む
狭い稜線に建てられたキレット小屋

キレット小屋~五竜山荘(4時間半)

キレット小屋から五竜岳山頂までは八峰キレットほどではありませんが険しい岩場の登りが4時間続きます。

途中G5、G4と呼ばれる岩峰を超えていき、G3が五竜岳山頂です。

山頂からはここまで歩いた道、これから歩く道が一望できます。

山頂からの景色を堪能して北側に下ると南側に比べるとはるかに穏やかな見晴らしの良い登山道を下りG2、G1、G0の小ピークを過ぎると1時間弱で五竜山荘、テント場も併設された快適な山小屋です。

(外部リンク:五竜山荘

八峰キレットからみた五竜岳
八峰キレットを超えても五竜岳山頂までは岩の急登が続く
山頂から来し方を振り返る ずいぶん歩いたが・・・・
行く末(白馬まで続く稜線) まだまだ長い 

五竜岳から白馬岳

五竜山荘~唐松岳(2時間半)

五竜山荘からハイマツ帯の登山道を1時間程下ると最低鞍部に達します。

そこから唐松岳(標高2696 m)までは1時間半の登り返しです。

途中にある牛首は距離こそ短いものの、八峰キレット同様に切れ落ちた岩場です。
対向者に注意して、集中して通過します。

唐松岳直下には唐松岳頂上山荘があります。
この先は本コース最大の難所 不帰ノ嶮なのでここで十分休憩して、万全の状態で進みましょう。

(外部リンク:唐松岳頂上山荘

唐松岳
唐松岳頂上山荘の前から見る唐松岳

不帰ノ嶮(2時間半)

唐松岳を越えるといよいよ不帰ノ嶮、三峰、二峰南峰、二峰北峰、一峰の順位越えていきます。

三峰は東側を巻きます。

核心部は二峰、高度感のあるやせ尾根と、急な鎖場が連続します。

ヘルメットを装備し三点支持を確実に進んで下さい。

二峰北面の岩場を下りきりハイマツ帯のやせ尾根を登り返すと一峰です。
振り返るとここまでの難路が良く見えて、思わずガッツポーズしたくなります。
か恐怖がぶり返すか

ここまでで唐松岳から大体2時間強です

二峰北面の下りは一枚岩の長い崖を鎖を補助として進みます。
高度感は抜群ですが、しっかりと足場を確認しながら、足で体を支えて降りれば大丈夫です。
怖いからと言って上体を岩に張り付けてしまうと、相場が確認できず危険です。
上体はある程度岩から離して、しっかりと足に体重をかけましょう。

不帰ノ嶮のコースタイムは唐松岳側からで2時間少々、白馬岳側から出3時間程度ですが、途中すれ違い不可能な険しい道が続くため、混雑時には大渋滞します。時間に余裕も持った計画を立てるとともに、できるだけ混雑する時間帯を外して歩きましょう。
(例:唐松岳頂上山荘に宿泊し、日出直前に唐松岳を出発すると、山頂でご来光を待つ登山者が来る前に核心部を抜けられます。)

悪天候での不帰ノ嶮挑戦は、(少なくとも管理人には)ほとんど自殺行為です。自分の力量を完璧に把握したプロの登山家でもない限りはやめておいた方がいいです。

不帰一峰から振り返る二峰北面の一枚岩
不帰二峰南峰から先が核心部

天狗の大下りを登って天狗山荘(2時間半)

不帰ノ嶮一峰からは天狗の大下りと呼ばれる急坂です。
こちら側からだと天狗の大登りですね。

白い砂に覆われた美しい稜線で、危険個所は少ないですが、きつい登りが天狗の頭(標高 2812 m)まで続きます。
天狗の頭からは不帰ノ嶮はもちろん、黒部渓谷を挟んで剱岳の雄姿がとてもきれいです。

天狗の頭から天狗山荘までは管理人が本コース中でも最も好きなエリアです。

コマクサやトウヤクリンドウなど珍しい花に囲まれた緩やかな稜線が白馬鑓ヶ岳へと延びる、天寿の散歩道を天狗山荘まで歩きます。

天狗山荘は周囲をお花畑に囲まれた小屋です。

ここのテント場は周囲をお花畑に囲まれていて、テントの中で小屋で買ったビールを飲みながらゴロゴロしているだけでとんでもなく幸せな気分になれます。

管理人がこれまで泊まったテント場の中でも景色と雰囲気の良さではベスト3に入ると思います。

(外部リンク: 天狗山荘

天狗の頭周辺の道
天狗の頭からの散歩道 最高だぁ
天狗山荘手前の稜線
緩やかな登山道が白馬鑓ヶ岳のとりつきまで続く
天狗山荘テント場より
天狗山荘のテント場この景色を見ながらゴロゴロできる幸せ


天狗山荘~白馬岳(3時間)

天狗山荘からは白馬鑓ヶ岳、杓子だけ白馬岳の白馬三山を目指します。

最初の白馬鑓ヶ岳(標高 2903 m)まではザレた登りを40分程登ります。

白馬鑓ヶ岳を越えると杓子沢のコルまでは急な下り、足場が悪い個所もあるので慎重に。
コルから登り返すとほどなく杓子岳(標高 2812 m)です。
山頂は巻くこともできますが、せっかくなので登っておきましょう。
白馬鑓ヶ岳からの所要時間は1時間弱です。

杓子岳を越えると右手に小雪渓の望めるお花畑の道が続きます。
1時間ほどで村営頂上山荘、そこから白馬山荘をへて白馬岳山頂まではさらに20分ほど歩きます。
テントを張る場合は村営頂上山荘で受け付けです。
(外部リンク:村営頂上山荘

白馬山荘は大人気の白馬岳にあるだけに、その規模は日本最大級、小屋というよりもはや小さな集落といった趣です。ここに泊まると翌日のご来光を白馬岳の山頂で迎えられます。
(外部リンク:白馬山荘

白馬鑓ヶ岳山頂から見る雲海
夜明け前 白馬鑓ヶ岳山頂から見下ろす雲海
小雪渓上部のお花畑
白馬岳山頂から大雪渓(右)と白馬沢(左)を見下ろす

白馬岳から白馬大池を経由して下山(3時間)

白馬岳を越えても楽しい山旅は終わりません。

白馬岳山頂から小蓮華岳(標高 2769 m)までは開けた稜線歩き、振り返ると後立山の山々が一望でき、これまでの道のりを感慨深く振り返ることができます。

行く手に白馬大池を眺めつつ1時間少々歩くと小蓮華岳、白馬大池まではそこからさらに1時間半程度です。
池のほとりには白馬大池山荘が建ってます。
ここに泊まって池越しの白馬岳を堪能するのもよさそうですね。
(外部リンク:白馬大池山荘

白馬大池から乗鞍岳のケルンへの登りは短いですが巨岩がゴロゴロした歩きにくい急坂を1時間強登ります。
ケルンを越えればあとはゴロゴロ岩の下り、1時間ほどでロープウェー駅のある栂池自然公園に到着です。
お疲れさまでした。

稜線上からの白馬大池
小蓮華岳からみる白馬大池
白馬大池
白馬大池湖畔 残念ながらガスにお隠れになった白馬岳orz

まとめ

今回は立山連峰の向かいに位置する後立山連峰の縦走コースを紹介しました。

技術体力ともに国内ルートの中では最難ルートの一つだと思います。

でもその分、後立山の個性豊かな山々の魅力を見比べながら険しい稜線を歩き切った時の感動は一生ものの思い出になること間違いなしです。

心身、道具ともに十分に準備を整え、余裕を持った計画で挑戦してみて下さい。

ヘルメット忘れないでね。

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